プロジェクト概要

仁王門プロジェクトとは

仁王像の「魂」を奥出雲に
日本とオランダをつなぐ
アートプロジェクト

仁王門プロジェクトは、奥出雲町の古刹「岩屋寺」から失われ、現在アムステルダム国立美術館に所蔵されている仁王像の「魂」を故郷に取り戻すための国際的な取り組みです。オランダの彫刻家イッケ・ファン・ローンさんの呼びかけで2018年に始まり、日蘭両国の市民約400人がデルフト焼きタイルに絵付けをした「ブルー仁王」を制作しました。

「Issho-ni/Tomo-ni(いっしょに、ともに)」という名前が示す通り、このプロジェクトは日本とオランダの人々が協力して創り上げる共同作業です。文化の垣根を越えて人々がつながり、地域の歴史と誇りを再生する取り組みとして、現在は崩壊した仁王門の再建とブルー仁王の安置に向けた活動を進めています。

岩屋寺の仁王像 ─ 失われた守り神

奥出雲町の岩屋寺は、天平勝宝年間(749~757年)に行基によって開かれたとされる古刹です。かつて仁王門には14世紀に造られたとされる一対の仁王像が安置されていましたが、1970年代に姿を消し、その後京都の古美術商を経て、2007年にアムステルダム国立美術館に収蔵されました。

現在、この仁王像はヨーロッパで唯一の本物の仁王像として、同館アジア館の日本ギャラリーの目玉となっています。2013年には京都大覚寺の僧侶により開眼供養式が執り行われ、仁王像に魂が吹き込まれました。

オランダ人彫刻家との出会い

プロジェクトの発起人、イェッケ・ファン・ローンさんは、アムステルダムを拠点に活動する彫刻家です。2013年、アムステルダム国立美術館で岩屋寺の仁王像と出会ったイェッケさんは、博物館という文脈で展示されている仁王像に強い違和感を覚えました。

彫刻家としての視点から、仁王像は本来、人々が間を通り抜けるように設計されており、寺の参道を守るという役割を持っていたことに気づいたイェッケさん。美術館の白い壁に背中をつけて展示されている状態では、本来の役割を果たせていないと感じたのです。

2015年、イェッケさんは奥出雲町を初めて訪れ、岩屋寺の仁王門を見学。以来、幾度も奥出雲に通う中で、地域の人々が仁王像に対して抱いていた思いや、失われた文化財への喪失感に触れ、「アムステルダムの仁王像をここに戻すことができないのなら、せめてその魂だけでも返したい」という思いを強くしました。

イェッケ・ファン・ローン(Jikke van Loon)

1970年代オランダ生まれの彫刻家。インテリア設計士の母の影響で幼少期から日本文化に触れる機会があり、東洋哲学への関心を深める。木炭や粘土などの自然素材を用いた彫刻作品を手がけ、代表作《アントン・デ・コム》はアムステルダム国立美術館に収蔵されている。現在は人間ではないモノの寿命をテーマにした’Singing songs to stone’シリーズなども発表している。

 

ブルー仁王の誕生

イッケさんは、単に新しい仁王像を自分一人で制作するのではなく、多くの人々の思いが込められた作品を作りたいと考えました。そこで選んだのが、オランダの伝統工芸「デルフト焼き」のタイルを使った手法です。

2018年から始まった「Issho-ni/Tomo-ni」プロジェクトでは、日本とオランダの一般市民約400人が参加し、それぞれの思いを込めながら540枚のタイルに絵付けを施しました。こうして制作された等身大のタイル画は「ブルー仁王」と名付けられ、2019年に奥出雲町に贈呈されました。
制作されたのは阿形(あぎょう)像と吽形(うんぎょう)像の2体で、それぞれの前面と背面の合計4つのタブローが完成。現在は奥出雲町本町会館に展示されており、最終的には側面も制作して立体にし、再建される仁王門に安置される予定です。

仁王門再建への道のり

ブルー仁王を安置するには、崩壊が進んでいた岩屋寺の仁王門を再建する必要があります。そこで2021年から「仁王門プロジェクト」がスタート。地元有志と共に、仁王門の再建と周辺環境の整備に取り組んでいます。

2024年4月には、京都建築専門学校の学生たちと地元大工チームの協力により、仁王門の解体作業が行われました。現在は部材を京都へ運び、宮大工と学生たちによる修復作業が進められています。

再建にあたっては、従来の仁王門を忠実に復元するか、新たなデザインで再構築するかなど、様々な検討が重ねられています。いずれにせよ、2025年の完成を目指して、ブルー仁王を迎える新たな「門」を創り上げる取り組みが進行中です。

国境を越えた絆

仁王門プロジェクトは、単なる建造物の再建ではなく、日本とオランダをつなぐ文化交流のプラットフォームとなっています。毎年11月に開催される「仁王フェスティバル」は、両国の絆を深める恒例イベントとなり、オランダからの来賓や地元住民が一堂に会する交流の場となっています。

また、オランダの高校生の奥出雲ホームステイや、奥出雲の中学生との交流など、若い世代を巻き込んだ活動も展開。アーティスト・イン・レジデンスプログラムでは、オランダの若手アーティストが奥出雲に滞在し、地域の風土から創作活動を行なっています。

こうした国際交流は、奥出雲の人々が自分たちの文化や歴史を再認識するきっかけとなり、地域の誇りを取り戻す役割も果たしています。

2025年 次なるステージへ

2025年は仁王門プロジェクトにとって大きな節目の年となります。4月から開催される大阪・関西万博では、オランダパビリオンに期間限定(2025年10月1日~数日間予定)で「ブルー仁王」が展示されることが決定。10月1日当日は、奥出雲町立横田中学校の生徒たちによる「未来に残したい・伝えたい奥出雲」をテーマにした発表も予定されており、国際舞台で奥出雲の魅力を発信する絶好の機会となります。

また、2025年10月13日には第5回仁王フェスティバルが開催され、修復・リノベーションされた新仁王門にブルー仁王が安置される予定です。この日は、アムステルダム国立美術館で2013年に仁王像の開眼供養式が行われた日と同じ日で、新旧の仁王像が結ばれる象徴的な日となります。

このプロジェクトは、失われた文化財の「魂」を取り戻すだけでなく、奥出雲の歴史と文化を未来へとつなぎ、国際的な交流を通じて地域に新たな活力をもたらす取り組みへと発展しています。

プロジェクトに参加する

仁王門プロジェクトは、多くの方々の協力と支援によって進められています。このプロジェクトに参加し、奥出雲の文化と歴史を未来へつなぐ取り組みを一緒に創り上げていきませんか。

ボランティア参加

イベント運営や環境整備、通訳など様々な形で活動に参加できます。特別なスキルは必要ありません。奥出雲の魅力を次世代につなぐ活動に、ぜひご参加ください。
イベントがある際は、HP上の新着情報でお知らせします。

寄付・支援

仁王門の再建や国際交流活動には、多くの資金が必要です。プロジェクトの趣旨にご賛同いただける方は、ぜひご支援をお願いいたします。

情報発信

SNSやブログなどで、プロジェクトの情報を広めていただくことも大きな力になります。奥出雲と岩屋寺の魅力、そして日蘭交流の取り組みを多くの方に知っていただければ幸いです。

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